【F1】パワーユニットとは?何馬力?エンジンとの違いとその仕組み

F1の技術

F1を見ててよく聞く用語、パワーユニット。エンジンとは似てるけど違う、だけどどういう仕組みかわからないという方も多いのではないでしょうか?今回はパワーユニットについて詳しく説明していきます。

2026年のパワーユニットレギュレーション変更についてはこちら!

パワーユニットとは?

パワーユニットとは、エンジンとモーターやバッテリーなどを合わせた動力源のことです。

2008年までのF1は一般車と同じように動力源がエンジンだけでした。しかし2009年からのレギュレーションにより、プリウスなどと同じハイブリッドシステムが導入され、2014年からのレギュレーションでさらに進化し複雑になったパワーユニットが導入されました。

パワーユニットは主に6つの部品で構成されています。

  • エンジン
  • ターボチャージャー
  • MGU-K
  • MGU-H
  • Energy Store
  • Control Electronics

配置はこんな感じです。

それぞれ順番に説明していきましょう。

エンジン

まずはエンジン。基本スペックは1.6LV6ターボ、最大馬力は約850馬力といわれています。

エンジンは正式には”Internal-Combustion Engine”、内燃機関と呼ばれ、略してICEとも呼ばれています。

基本的な動力原理は一般車のそれと変わりありません。しかし一般車のエンジンの熱効率は約30%なのに対し、F1のエンジンは50%を誇ります。さらに最高で15000rpmで運用されるため、細部まで最先端技術が使用されています。ここでは説明しきれないためこちらの記事でさらに詳しく説明します!

ターボチャージャー

Mercedes F1のターボチャージャー

ターボチャージャーはエンジンに空気を多量に送り込むための装置です。TCと書かれることもあります。

ターボチャージャーはタービンとコンプレッサーで構成され、排気ガスのエネルギーをタービンで回収しコンプレッサーで吸気ガスをエンジンに押し込んでいます。F1のターボチャージャーはMGU-Hが装着されており、一般車のそれと比べるととても複雑な構造になっています。

MGU-K

Mercedes F1のMGU-K

MGU-Kとは”Motor-Generator-Unit-Kinetic”の略です。

“Motor”はモーター、動力源のことを指し、”Generator”は発電機を指します。”Kinetic”とは運動エネルギーのことです。

MGU-Kはブレーキのときに発電して、発電した電気を使用して加速するというシステムです。

もう少し難しく言うと、ブレーキング時に運動エネルギーの一部を発電機を介してバッテリーに貯蓄し、必要に応じて貯蓄されたエネルギーをモーターを介して開放するシステムです。

MGU-Kがない場合、ブレーキング時にブレーキパッドとブレーキディスクの摩擦で運動エネルギーが熱エネルギーに変換されます。熱エネルギーは空気中に散乱してしまい、再利用ができません。

MGU-Kを使用することで、ブレーキによって散乱してしまうエネルギーを回生でき、蓄えられたエネルギーはより高速な加速を実現しています。

ちなみに発電と駆動は真逆のことを行っているのですが、3相交流モーターという特殊なモーターを使用することでひとつのパーツで行うことができます。

MGU-Kはクランクシャフトにダイレクトにつながっており、エンジンの補佐的な役割で使用されています。また予選のアタックラップ前にはエンジンのエネルギーを直接MGU-Kを介してバッテリーに蓄え、アタックに備えるなんてことも行っています。

MGU-H

MGU-Hとは”Motor-Generator-Unit-Heat”の略です。

MGUはMGU-Kと同じ意味ですが、”Heat”は熱エネルギーのことを指しています。

MGU-Hではエンジンの排気ガスに含まれる熱エネルギーの一部を発電機を介してバッテリーに貯蓄し、必要に応じて貯蓄されたエネルギーをモーターによって解放しています。

MGU-Hも3相交流モーターを使うことでエネルギーの貯蓄と放出をひとつのパーツで行っています。

また排気ガスを利用するため、同じように排気ガスを利用するターボにつながっています。排気によってターボのタービンが回転し、タービンにつながれた発電機が回転することで発電を行います。

MGU-Hによって回収されたエネルギーはバッテリーに貯蓄されるか、MGU-Kに直接送られて駆動力として利用されています。

モーターとしては主に2つの目的で使用されます。

1つはターボラグを減らすことです。F1エンジンは巨大なターボを使用しているため、ひとたびエンジンの回転数が上がれば大量の空気をエンジンに押し込むことができ、馬力の大幅アップが可能です。しかし低回転では大きいターボを回すエネルギーが足りず、馬力が落ちてしまいます。

そこでターボをMGU-Hによって排気ガスに頼らず直接回転させることでターボラグを減少、あるいは無くすことができるのです。

もう1つは高回転時のタービンの抵抗を減らすことです。

ターボラグと動作の原理は一緒ですが、目的が違います。ターボのタービンは言ってしまえば排気ガスの通り道を邪魔する形になり、特に高回転エンジンのF1では抵抗が大きくなります。そこでMGU-Hを利用してタービンを回転させることで抵抗を減らし、スムーズな排気に貢献しているのです。

MGU-KとMGU-Hを合わせて”Energy-Recovery-System”、ERSと呼ばれたりもします。

MGU-Hについて説明した動画ではメルセデスのYouTubeがわかりやすかったです。英語での説明のみですが、ターボ内のMGU-Hの配置などが見れてとてもわかりやすいです。

Energy Store

Energy StoreはMGU-KやMGU-Hで回生された電気エネルギーを貯蓄するバッテリーです。略してESと書かれていることもあります。主にリチウムイオン電池が使用されています。

Control Electronics

回生エネルギーの流れのコントロールを行う装置です。略してCEと書かれることもあります。

具体的に説明すると瞬間のMGU-Hのエネルギーの回収量、ESのエネルギーの貯蓄量、MGU-Kのエネルギーの放出量などのデータをもとに、どこにどれくらいのエネルギーを送ればいいかを算出しているのです。

回生エネルギーをより効率的に使用するためになんと1レースに43兆回の計算を行っているそうです。

使用上の制限

MGU-Kは1ラップにつき最大で2MJの回生と4MJの出力が可能です。ただし最大パワーは120kW(161馬力)に制限されています。

しかしMGU-Hは流入量にも流出量にも制限がありません。

よってMGU-Hの性能を高めることでパワーユニット全体の効率を上げることに繋がります!

年間の使用数の制限

80年代のF1にはエンジンの年間使用数の限度はなかったためチームは無限にエンジンを生産でき、なかには予選だけのためのエンジンなんてのも製造されていました。

しかし現在は開発コストの抑制と持続可能性の流れからパワーユニットの年間使用限度が決められました。上限はそれぞれ、

エンジン4機
ターボチャージャー3機
MGU-K4機
MGU-H4機
ES2機
CE2機

となっています。年間使用数を超えると10グリッド降格ペナルティになります。

まとめ

今回はパワーユニットについて解説しました。現在のF1は高度で複雑なハイブリッドシステムを備えていることがわかりましたね。各パーツの性能、さらにそれらの制御はマシンのパフォーマンスに大きく影響がでることは想像に難くないと思います。

制御の内容などは表に出ることは少ないですが、仕組みを知れるだけでレースの展開やバトルの行方が理解できたりして、よりレースを楽しめると思います!

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