F1で学ぶ流体・空気力学その3 エアロパーツの紹介

F1の技術

全3回の流体力学解説の最終回はエアロパーツの紹介をしたいと思います。

前回はこちら!

スロット

スロットとはリアウィングエンドプレートに空いている細長い穴のことです。

矢印の部分がスロット
参照:https://www.formula1.com/content/dam/fom-website/manual/Technical/2016%20Piola/126-016%20%20McLAREN%20%20R%20%20WINF%20MAL.jpg.img.1024.medium.jpg

スロットの役割の説明の前にエンドプレートの役割を説明しましょう。

ウィングは上面が高圧、下面が低圧になりますね。もしエンドプレートがない場合、ウィングの端で空気が上面から下面に回り込もうとして渦を起こします。渦は剥離の発生を遅らせてくれるので抵抗を遅らせることができると説明しましたが、実は渦自体は抵抗になります。リアウィングで発生する渦は比較的大きいので、渦の発生は避けるべきです。そこでエンドプレートを取り付けることで空気が回り込むのを防ぎ、渦の発生を和らげています。

しかしエンドプレートの外側は内側上面に比べて低圧になるため、まだ渦が発生してしまいます。そこで内側上面の空気を外側に流すようにスロットを設けると、圧力差が減少し渦の発生を抑えることができます。

またエンドプレート後方上部は少し下がっていますが、ここではスロットの流れと内側下面の流れが接触し反対向きの渦が発生します。この渦がもとの渦と打ち消しあってさらに抵抗を低減させることができるのです。

ディフューザー

ディフューザーはフロアの一番後ろに取り付けられ、フロアの性能で重要な役割を担っています。

ディフューザー
参照:https://cdn-7.motorsport.com/images/amp/0JBokaA0/s6/formula-1-bahrain-march-testin-2.jpg

ディフューザーはフロア前方に比べて大きく開いています。空気の流れる総量はフロア前方とディフューザーで変わらないのでフロア前方での流れの速度が上がり、ベンチュリ効果によってダウンフォースを発生させます。レーキといって車体全体を前傾させることでディフューザー開口部がさらに広がり、ダンフォースが増加します。ただし前傾させすぎると剥離してしまうのでそこが注意点です。

バージボード

バージボードはサイドポッドの前方に見られる小さいエアロパーツがいくつも重なって構成されている部分です。

バージボード
参照:https://f1tcdn.net/gallery/var/resizes/2020/bcn-feb27/038.jpg

バージボードに入る空気の流れは二つに分けられ、内側は綺麗な流れ、外側はフロントウィングやタイヤ、サスペンションなどの構造物の影響で乱流となっています。バージボードによって乱流を外側に逃がし、綺麗な流れをフロアに導くことでフロアのパフォーマンスを最大化しています。

内側の綺麗な流れをフロアに導く
参照:https://cdn-3.motorsport.com/images/mgl/0RrnWav0/s8/mclaren-mp4-8-airflow-1.jpg

さらにバージボードはフロアと路面との間で渦を発生させることで空気の壁を作り、ベンチュリ効果をより高めています。

Sダクト

Sダクトはノーズにあけられている穴から流れの一部を取り込み、ノーズ上面に排出するデバイスです。

本来ノーズの上面では剥離が起こりやすいのですが、Sダクトが空気の流れを排出することで境界層にエネルギーを与えることができ、剥離を防ぐことができます。

まとめ

F1のエアロは小さいものから大きいものまで複雑に構成されて圧力を制御し、抵抗を最小限にとどめつつダウンフォースの増加を目指していることが分かりました。3回にわたる「F1で学ぶ流体、空気力学」を通して少しでもエアロについて詳しくなりF1を楽しんでいただけていれば幸いです。ありがとうございました!

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