【F1】サスペンション解説

F1の技術

F1の複雑なサスペンション機構について解説したいと思います。F1のサスペンションは他のフォーミュラカーやレーシングカーと比較しても特にレアな設計となっており技術屋にはたまらない面白い仕組みがたくさん詰まっています!

前回はブレーキシステムについて解説しました。

ダブルウィッシュボーン

まずはなんといってもダブルウィッシュボーンを説明しないわけにはいきません。ダブルウィッシュボーンサスペンションとは、2つのAアームを上下に配置しその先端にアップライトを取り付けるサスペンション形式です。この形式はホイールの動きを厳密に制御でき、理想的なサスペンションジオメトリを実現できるので多くのレーシングカーに採用されています。

ダブルウィッシュボーンサスペンション
参照:racecar-engineering.com

F1のダブルウィッシュボーンはAアームが長く、ロールセンターの動きを最小に抑えることができ、ロールが空力を邪魔しない設計になっているといえるでしょう。

ジョイント

サスペンション設計の中で特にF1特有かなと思うのがジョイントです!フロントのAアームはモノコックにダイレクトにつけられていますが、これはフレクシャージョイントというものを使っているからです。

フレクシャージョイント
参照:X.com/Scarbs.Tech
ボールジョイント
参照:keep-racing.de

フレクシャージョイントは湾曲する1つの部品がシャシーとAアームをつなげるシンプルな構造となっており、サスの軽量化に貢献しています。しかし湾曲する部材は熱に弱いため、ギアボックスにつなげられるリアサスペンションには通常のボールジョイントが採用されています。

プッシュロッド・プルロッド

プッシュロッド・プルロッドはどちらもダブルウィッシュボーン形式のサスペンションに同時に使われることの多いシステムです。どちらも下から押し上げる力を支えるためのものですがその方法が異なります。プッシュロッドはアップライトに向けて下方向に取り付けられているので、荷重がかかると押すように反応します。このためプッシュロッドと呼ばれます。反対にプルロッドはアップライトに向けて上方向に取り付けられるので荷重がかかると引くように(プルするように)反応します。

参照:X.com/Scarbs.Tech

F1では伝統的にフロントはプッシュロッド、リアはプルロッドのマシンが多いですが、最近ではレッドブルやマクラーレンがフロントにプルロッド、リアにプッシュロッドを採用しています。どちらが良いとは一概には言えず、マシンに合う方を採用するのがベストでしょう。ただしプルロッドは空力的にプッシュロッドより良いのではないかといわれることもあります。

またプッシュロッド・プルロッド関係なくF1特有まことでロッドがアップライトに直接取り付けられているというものがあります。他のレーシングカーではロッドはAアームに取り付けられることがほとんどです。しかしF1ではこのシステムによってステアリングを切ると外側が沈み込みダウンフォースを増加させられるようになっています。

コイルばねの代わり・トーションバー

乗用車や他のレーシングカーにはばねとショックアブソーバーが一体となったサスペンションキットが取り付けられていますが、F1ではいわゆるコイルばねはついていません。代わりにトーションバーというものを使っています。原理は簡単で金属の棒をねじる反動を利用しています。実はコイルばねを使うよりも安価でパッケージも小さくできるためメリットの多い方法なのだそうです。ただしショックとはいったいにできないためショックを別の位置にマウントしています。

トーションバーに関してこの動画で詳しく解説されています。英語ですが英語がわからなくても図で解説してくれているので参考にどうぞ!

アンチロールバー・ヒーブスプリング

アンチロールバーは乗用車にもついているのでわかる方も多いのではないでしょうか。基本的な動作の原理は同じですが、精密に設計・製造されています。

レーシングカー特有のもう一つのダンパーシステムがヒーブスプリングです。これはピッチ方向の動きを制御させるものです。エアロマシンはブレーキなどでノーズダイブしたり加速でノーズが持ち上がるとエアロバランスが崩れてしまうのでヒーブスプリングの存在は大変重要です。またロール方向には影響を与えないのでアンチロールバー・ヒーブスプリングをそれぞれ調節することでそれぞれの動きを独立して制御できます。

ホイールテザー

レースには事故がつきものです。F1でも安全対策のためホイールテザーと呼ばれるものの装着が義務付けられています。ホイールテザーは強力なケーブルでクラッシュなどの際タイヤが飛んでいかないように結び付けておくものです。

カーボン製のカバー

Aアームやアップライトなどはカーボン製のカバーが取り付けられています。カーボンは成形しやすいので翼形状のカバーとして使用することで乱流の発生を防いでいます。また乱流の発生を起こしやすいダンパーなどのサスペンションシステムは極力シャシー内に収まるようにパッケージされています。

まとめ

今回はF1のサスペンションについて解説してみました。最後にサスペンション全体の構成図とまとめです!

参照:X.com/Scarbs.Tech
  • ダブルウィッシュボーン形式でプルロッド/プッシュロッド
  • フレクシャージョイントによる軽量化・単純化
  • エアロをとことん追求した設計

私は特にロッドの取り付け位置についてはとても感心しました。みなさんもF1の面白い設計や仕組みを見つけたらぜひシェアしてみてください!

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